鳥取の住民投票を市長がどんでん返し、庁舎の移転新築計画をめぐり

市庁舎建て替え問題、住民投票は「ノー」でも市長は「イエス」。市庁舎の移転新築か耐震改修かで揺れている鳥取市で、市長は7日、新築方針を明らかにした。市民からは「住民の意思を無視した」との批判が出ている…
A person casts his ballot during a referendum for joining local authorities, on April 07, 2013 in Strasbourg, eastern France. The referendum is to be held on April 7 to decide if the departments of Bas-Rhin and Haut-Rhin should merge into one single, new territorial collectivity of the Alsace region. AFP PHOTO/FREDERICK FLORIN (Photo credit should read FREDERICK FLORIN/AFP/Getty Images)
A person casts his ballot during a referendum for joining local authorities, on April 07, 2013 in Strasbourg, eastern France. The referendum is to be held on April 7 to decide if the departments of Bas-Rhin and Haut-Rhin should merge into one single, new territorial collectivity of the Alsace region. AFP PHOTO/FREDERICK FLORIN (Photo credit should read FREDERICK FLORIN/AFP/Getty Images)
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 市庁舎建て替え問題、住民投票は「ノー」でも市長は「イエス」。市庁舎の移転新築か耐震改修かで揺れている鳥取市で、市長は7日、新築方針を明らかにした。市民からは「住民の意思を無視した」との批判が出ている。

 時事通信は以下のように伝えている。

鳥取市の竹内功市長は7日の市議会本会議で、地震で倒壊の恐れが指摘されている市庁舎について「新たな施設の速やかな整備に向けた検討を進める」と述べ、別の場所に新築する方針を示した。市が2012年5月に行った住民投票では、新築移転ではなく耐震改修工事への賛成票が有効投票総数の過半数を占めており、市長の方針は住民投票の結果に反するとして波紋を広げそうだ。

時事通信社 2013/06/07 12:50)

■75億で新築?それとも21億で耐震?

 鳥取市では昨年5月、全国でも珍しい市庁舎の整備方法を問う住民投票が行われた。築約50年の市庁舎が震度6強の地震で倒壊の恐れがあるとされたため、市は100億円かけて移転新築する方針を固めた。これに対し、市庁舎周辺の住民たちが「税金の無駄遣い。震災後の厳しい財政状況でやるべきではない」と反発、現地での耐震改修にすれば約21億円に抑えられると主張した。市は事業費を約75億円に減額したが、住民たちは5万人以上の移転新築への反対署名を集めて住民投票を請求した。

 投票の結果、「耐震改修」派が「移転新築」派に約16500票の大差をつけて勝利。竹内功・鳥取市長はこの結果を受けて「投票結果を尊重する」と、移転新築計画の撤回へと方針転換した。しかしその後、市議会で整備方法を検討したところ、耐震改修には当初予定の倍の40億円以上がかかるとの試算結果が出たことで、議論は暗礁に乗り上げた。市議会は「耐震改修案の実現は困難」と結論づけた。そして7日、市長が移転新築の方針を明確に示した。

■住民投票に法的拘束力はあるのか

 ニュースなどで取り上げられる「住民投票」は、条例に基づく住民投票がほとんど。条例上の住民投票は、法的拘束力を持つ議員・首長の解職要求などとは違い、政治的拘束力にとどまる。

「知恵蔵2013」では

住民投票は、代議制民主主義を形骸化させるとの批判もあるが、4年に一度の選挙では、選挙後に生じた問題への信任ができない、現状では地方議会が住民の声を十分吸い上げているとはいえないとして、代議制を補う制度と位置づける主張もある。

(北山俊哉関西学院大学教授 / 笠京子 明治大学大学院教授 )

と解説されている。

■小平市では開票もされず

 先月、東京都小平市で実施された都道の建設を巡る住民投票(都内で初の条例に基づく住民投票)では、建設による環境悪化を心配する住民らが署名を集めて条例制定を直接請求し、今年3月に条例ができた。

 その後、小平市が投票を「市民の総意としてみなすべき」として「投票率50%未満の場合は不成立」との用件を加えた。51010票が投じられたものの、投票率は35%にとどまり、成立要件を満たしていないとして開票もされなかった。90日の保管期限を超えると破棄されてしまうため、市民団体が情報公開請求をしたが、市の選挙管理委員会は「非公開」の決定をした。

 ちなみに、今年4月7日に投開票があった小平市長選の投票率は37%、当選した小林正則市長の得票数は33106票だった。

 硬直化した政治に住民の意見を反映させる手段として、住民投票は有意義な制度であるのは確かだが、現状では首長に受け入れられることは極めてまれであり、制度が形骸化しているという批判もある。しかしながら、一票に込められた思いは決して軽くない。小平市長は5万もの票を確認もせずに廃棄することにおかしさを感じないのか。首長たちには一票の重みを改めて思い出して欲しい。

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