公的年金を運用する年金積立管理運用独立法人(GPIF)が、年金資金運用の内容を見直す。ロイターが報じた。
GPIFは、厚生年金・国民年金の管理運用を行なっている。国民に支払われている年金は、国民が支払った国民年金保険料と税金、そして、GPIFによる運用利益である。
実際の運用業務は信託銀行などに委託しているが、GPIFは運用方針を策定し、資金を国内外の株式や債権にどの位配分するかなどのポートフォリオの内容を決める。
産経新聞は、アベノミクスの円安・株高の影響で、公的年金が過去最高10兆円の黒字になったと報じている。
厚生年金と国民年金の積立金を運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、年金支払いの増加で24年度は6・4兆円の年金積立金の取り崩しが必要とみていた。取り崩しは14年度以降続いていて、22年度は6兆円、23年度は4・9兆円だった。
(産経ニュース「公的年金、過去最高10兆円の黒字 アベノミクス効果 24年度」より。 2013/5/31 01:30)
GPIFの最近の運用では、第3四半期となる2012年10月〜12月は、5兆1,352億円となっており、運用資産額は111兆9,296億円となっている。
Wikipediaによると、GPIFこれまでの運用実績は、下記のとおりである。
平成20年度 -9兆6670億円
平成21年度 +9兆1850億円
平成22年度 -2999億円
平成23年度 +2兆6092億円
(ウィキペディア「年金積立金管理運用独立行政法人」より)
今回報道があったのは、この資金の運用方法を弾力的に変えるという点だ。年金の運用資金はその投資対象の割合が決めてあるが、この割合を保つために無理に買い増したり、無理に売却したりを行う必要が無いようにするということだ。このため、せっかく値上っていた銘柄を売却することになるなどが、なくなり、杓子定規での運用を見直すことにつながると考えられる。
また、現在のポートフォリオの大まかな内容を変えるわけではないと、ロイターは報じている。
今回、リスク・リターン・プロファイルの変更が検討されても、現行のGPIFの基本ポートフォリオの資産別の構成割合は変更されない見込み。GPIFの現在の資産別の構成割合は、国内債券67%、国内株式11%、外国債券8%、外国株式9%。このほかに短期資産が5%。これに加えて各配分に対して許容される「かい離比率」があり、国内の債券では基本ポートフォリオの資産構成割合に対して上下8%、国内株式は上下6%、外国債券、外国株式はともにそれぞれ上下5%となっている。
(ロイター「GPIF、運用の弾力化を検討=関係筋」より。2013/05/30 20:27)
しかし、このポートフォリオの中身に、ベンチャー投資などが入れられるよう制度改革すべきだという声が自民党の経済再生本部の議論の中で出た。経済再生本部の本部長代行である塩崎恭久氏は、現代ビジネスに掲載された記事で、今大事なのは市場に回るべき貴重なマネーを国債漬けにすることではなく、民間VCによる起業促進へと資金を回すことだとして、下記のように書いている。
中期計画に定められた基本ポートフォリオの資産内訳に「再生ファンドやVC、インフラファンド等PE」の欄を設け、そこに適正な割合を規定すれば、GPIFはそれに従った運用をできることとなるのだ。例え合計で総資産の1%であっても、GPIFの資産総額は110兆円なので1兆円になる。VC市場だけでも単純計算で2倍に膨れ上がるわけだ。
(現代ビジネス「公的年金に「Invest in Japan」の哲学を! アベノミクスの目指す成長戦略に不可欠なGPIFによる明日への投資」より。 2013/04/12)
しかし、厚生労働省の中では、年金の運用資金は国民からの預かりものだから、アクティブに運用するのではなく安全に運用するべきだという意見が根強い。
我々の年金資金の運用はどのようにあるべきか。みなさんはどう思いますか?
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