●特養の「実在内部留保」、1施設あたり約1.6億円
厚生労働省は21日、社会福祉法人が運営する特別養護老人ホームの内部留保の実態を調べた調査の結果を公表した。法人に未使用の資産として残っている「実在内部留保」でみると、1施設あたりの平均額は約1.6億円だった。今回の調査結果から単純に計算すると、特養は全国に6126施設あることから(2009年10月時点)、全体でおよそ9801億円の内部留保を抱えていることになる。
今回の調査では、一部の特養が巨額の内部留保を抱えている実態も明らかになった。「実在内部留保」でみると、1.5億円未満の特養が48.4%と半数を占めていた一方で、1.6%が7.5億円以上、2.5%が6億円から7.5億円未満を持っていることが分かった。
ただし厚労省は、今回の調査で出てきた金額について、直ちに「特養ががめつく貯めこんだお金」と決めつけるのは早計だと説明する。内部留保にはその必要額や算出方法に関する基準がないほか、個々の施設にはそれぞれ異なる事情があり、「内部留保=ムダなお金」と単純に判断することができないためだ。厚労省は、一定の前提を置いて残しておくべき資産などを割り出して差し引いた結果として、約3割の特養が必要以上に内部留保を抱えていると考えられるという見方を示した。
特養の内部留保をめぐっては、一部の介護関係者から「溜め込み過ぎではないか」などと疑問の声があがっていた。厚労省は2011年12月の社会保障審議会で、1施設あたり約3億円の内部留保を抱えていることを示す調査の結果を報告している。
今回の調査結果では、この時とは異なる基準でみた「実在内部留保」の金額を示した。「実在内部留保」は、現金預金や有価証券といった資産から借入金や退職給与引当金などを引いたもので、法人に未使用の状態でとどまっている金額を指す。この時の基準を採用した「発生源内部留保(その他の積立金や次期繰越活動収支差額などを足したもの)」では、1施設あたり約3.1億円とほぼ同じ結果が出ている。
厚労省は現在、全ての社会福祉法人に財務諸表の公表を義務づけることなどにより、経営の透明性を高める改革を進めようとしている。特養ごとの内部留保の額にバラツキがあり、その額だけでは運営の健全性を判断しづらいことなどを踏まえると、地域への貢献度やお金の使い方を外から分かりやすくしていく改革が一層求められそうだ。