3Dプリンタによって救われた赤ちゃんの話が報じられている。ミシガン大学ヘルスシステムのブログにグレン・グリーン医師が投稿した記事によると、グリーン医師らは、気管・気管支軟化症で苦しんでいた赤ちゃんを救うために、3Dプリンタを利用したとしている。
日本小児科学会のホームページによると、気管・気管支軟化症の多くは2歳頃までに症状が徐々に軽快するが、生命の危険がある場合もあり、その際は手術を行うそうだ。
オハイオで両親と暮らして赤ちゃんのカイバくんは、生後6週間ごろから呼吸ができなくなる発作にいつもいつも見舞われていた。
グリーン医師らは、CTスキャンで赤ちゃんの気管と気管支を精密に撮影し、それを元に、3Dプリンタを使って、カイバ君の気管支を広げる添え木の役割をする「スプリント」と呼ばれる物質を作成。そのスプリントをカイバくんの体内に埋め込む手術を行った。この添え木の素材は、3年後には体内に吸収される素材が使われた。
手術は成功し、カイバくんは手術から21日後には、人工呼吸器から離れることが出来たそうだ。
今や3Dプリンタは元となる設計図さえあれば、ものを作ることが容易になった。今後ますます、医療での活躍の場は多くなりそうだ。医療だけでなく、食物までも、NASAから約1300万円の資金援助を得て、食べ物を作り出す3Dプリンターの開発が進められているという話もある。
しかし、なんでも再現出来てしまうため、銃まで3Dプリンタを使って作り出すことができるようになったという話も聞く。日本でも既に、6万件以上が銃のデータをダウンロードしたとの報道もあり、日本でも「データの規制は絶対にされなくてはいけない」との声も出ているようだ。
また、MONOistは、ベストセラー「MAKERS」を執筆したクリス・アンダーソン氏が語った、3Dプリンタの普及にともない訪れる未来について、下記のように報じている。
デジタルの設計データさえあれば、必要な部品を調達して実際に製品を作るまでのプロセスを、インターネット上で完結することができる。3次元の物体を成型できる3Dプリンタが手軽に利用できるようになり、誰もが自分の作りたいモノを製造できる時代になった、とアンダーソン氏は語る。
(MONOist 2013/01/30 10:00)
データさえ持っていれば、クラウド時代どの場所でも物が作れるということは、これまでの既得産業の勢力が衰え、ますます国境を意識しない経済活動がうまれるということであるとも考えられる。
日本は3Dプリンティングのデータ制御を行えるのか。技術の発達とともに、気にせねばならないことも山ほど出てきそうだ。
出典:University of Michigan Health System Blog「Saving a baby’s life with a 3-D laser printer」(2013/5/22)より。