マイナンバー制度のデメリット:今後の民間活用について

国民一人一人に番号を割り当て、所得や年金、納税などの情報を1つの番号で管理する、共通番号制度関連法案(マイナンバー法案)が9日、衆院を通り、成立する見通しとなった。成立すれば、2016年1月から制度がスタートすることになり、当初の民間利用は認めないとされる…
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国民一人ひとりに番号を割り当て、所得や年金、納税などの情報を1つの番号で管理する、共通番号制度関連法案(マイナンバー法案)が9日、衆院を通り、成立する見通しとなった。成立すれば、2016年1月から制度がスタートすることになる。

■共通番号制度(マイナンバー制度)とは

マイナンバー制度では、国民一人ひとりに番号(マイナンバー)が割り振られる。そのマイナンバーを通じて、これまで国や県町村がばらばらに管理してきた情報を関連づけ、相互に利用できるようにする仕組みだ。中長期在留者、特別永住者等の外国人住民も対象となる。

現在、各種の行政手続きには多数の書類を添付して提出する必要があるが、マイナンバー制度ではこの不便さを解消する。年金や児童扶養手当などの申請や、確定申告の手続きを行うときなどに、住民票や所得証明といった添付書類が不要になり、行政手続きが大幅に簡素化されることになる。

また、年金記録問題のようなミスをなくす効果が期待できたり、低所得者を偽装した生活保護費の不正受給を防止する役目もあると、産経ニュースが報じている。

マイナンバー制度は、各個人の所得水準や年金、医療などの受給実態を正確に把握し、効率的な社会保障給付を実現することを目的としている。行政事務の簡素化、効率化や、生活保護の不正受給や脱税の防止効果が期待される。

産経ニュース 2013.3.1 22:10)

死亡届が出されていたにもかかわらず、母親宛ての遺族年金120万円余りを不正に受給していた事件なども、マイナンバー制度があれば防げていた事件であると思われる。

その他、自分が収めた保険料に見合った社会保障が行われているかを、自分の目で確認することもできるようになる。

■国民はどうやってマイナンバーを知るのか?

産経ニュースではマイナンバーの通知について、下記のように報じている。

27年秋ごろに市区町村が国民全員にマイナンバーが記載された「通知カード」を送付。希望者には番号や氏名、住所、顔写真などを記載したICチップ入りの「個人番号カード」を配ることになっている。

産経ニュース 2013.5.9 21:56)

■マイ・ポータル(仮称)で自分の情報を確認

また、パソコンなどを利用して、自分の情報を確認する事ができる「マイ・ポータル(仮称)」という仕組みも導入予定だ。インターネットで自分専用の「マイ・ポータル(仮称)」というホームページにアクセスすることで、年金の納付状態や、所得状態などを確認できる。

■マイナンバー制度導入にかかるコストは?

マイナンバー制度導入にかかる費用は、現在明らかになっていないが、産経ニュースによるとマイナンバー制度導入に向けて、IT企業の間で特需が生まれると報じている。

IT企業が色めき立っているのは、その市場規模の大きさだ。民主党時代の法案では、「情報連携基盤」と呼ばれた(1)個人情報表示機能(2)情報提供ネットワーク(3)個人情報保護監視システム-の基幹部分について最大3千億円とはじいた。政権交代後にコストを洗い直した結果、「基幹部分の開発費用は190億円」と減額されたが、1700強に上る自治体システムの改修やネットワーク接続、スマートフォン(高機能携帯電話)などによる住民サービス提供といった機能拡大まで含めれば、1兆円を優に超える市場が見えてくる。

産経ニュース 2013.5.9 22:08)

■マイナンバー制度の懸念点

マイナンバー制度の懸念点としては、「国に監視されているようだ」との嫌悪感もあれば、個人情報の流失など、セキュリティ上の問題点を指摘する声も上がる。中国新聞では、既に導入している海外の各国で起こった事件について、下記のように報じている。

住民登録番号をパスポート取得からインターネット上の本人確認まで幅広く利用している韓国では、不正アクセスによる番号の流出や盗用による被害が多発。米国でも社会保障番号の不正取得による「成り済まし」犯罪の損害額が年間約500億ドル(約5兆円)に上ったとの政府調査があり、両国は個人番号の収集や利用を制限する方向に政策を転換した。

中国新聞 2013/5/9)

また、マイナンバーを通知する「通知カード」についても、下記のような声が上がっている。

■民間利用のために開放されるのか?

マイナンバー制度は、当初は民間での利用は認めないとされているが、今後、検討される事も考えられる。

諸外国の例を見ると、口座開設時の本人確認や、融資の審査を受けるとき、保険に加入するとき、アルバイトを含む就労を行うとき、教育や医療サービスを受けるときの本人確認など、様々な分野で利用されている。

例えば、マイナンバー制度の民間利用が進んでいるスウェーデンでは、病院に入院した時などの健康保険の保険金の申請の場合も、医師への診断書の請求から、保険会社への請求まで、オンラインで手続きを行うことができる。

また、ライフネット生命社長の出口治明のコラムによるとマイナンバー制度を利用したスウェーデンの企業の例として、マイナンバー制度を利用した民間企業が、子供が生まれた親に、おむつの広告を送ることができるという例を紹介している。

(ダイアモンド・オンライン「出口治明の提言:日本の優先順位」2013年4月16日)

マイナンバー制度をどこまで利用すべきなのか。

今後の議論は、民間利用の範囲と内容についてに集中するかもしれない。

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